概要
研究代表者
高瀬克範(北海道大学大学院文学研究院)
研究分担者
手塚薫(北海学園大学)
許開軒(北海道大学総合博物館)
研究協力者
Ben Fitzhugh (Department of Anthropology, University of Washington)
Michael Etnier (Burke Museum)
Seth Newsome (Biology Department, University of New Mexico)
目的 千島列島周辺における過去2000年間の海洋生産性の変動の復元とその人類への影響の解明
内容
2016年,北海道大学考古学研究室は,サハリン郷土博物館,米国ワシントン大学と共同で,国際共同研究Kuril Ainu Archaeology Project(KAAP)を北千島占守島で実施しました。資料は現在,サハリン郷土博物館に収蔵されていますが,出土動物骨だけは2019年秋にワシントン大学内におけるバーク博物館に合法的に移管されました(KAAPコレクション)。ワシントン大学は2000年代にやはりサハリン郷土博物館や北海道大学と千島列島全域で大規模な国際共同調査を行っており,そのプロジェクトで出土した動物骨もまたロシアからバーク博物館に合法的に移管されています。Kuril Biocomplexity Project(KBP)コレクションと呼ばれるこの資料体は,千島列島の動物骨資料としては世界最大のコレクションですが,南千島や中千島の資料が中心で,北千島の資料は数が少ないという特徴がありました。KAAPコレクションはKBPコレクションの内容を補う資料であることから,両者が一緒に保管されることでコレクションとしての価値がより高まります。
ただし,2019年にKAAPコレクションをロシアから移管したのちにコロナ禍となったため,米国における基礎整理作業は中断していました。このプロジェクトでは,2025年から3年ほどかけてKAAPコレクションの動物骨を同定し,リストを作成することで,博物館資料として多くの研究者が利用しやすい条件を整備します。同定は形態学的な手法によって行いますが,一部でコラーゲンフィンガープリント法も応用します。リストが整備されたのち,一部海獣や魚類について炭素・窒素同位体分析,アミノ酸窒素同位体分析を行い,海洋生産性の変化を捉えるための手がかりを入手します。