北大の考古学教育(学部編) Under-grad education system of archaeology

北海道大学文学部では考古学研究室で考古学をまなぶことができます。考古学のカリキュラムは以下の通り講義・演習(ゼミ)・実習の3本立てとなっています。

【講義】

  • 考古学概論(理論と方法)…教科書にもとづく講義により考古学の方法論と理論体系を理解します。
  • 考古学概論(学史と資料論)…考古学のあゆみと考古資料の特性について理解します。
  • 考古学…「縄文文化の考古学」「弥生文化の考古学」「日本考古学特論」「東北アジア考古学特論」「北海道の考古学(旧石器〜縄文)」「北海道の考古学(続縄文〜現代)」のテーマを,2名の教員が3年サイクルで講義します。

【演習(ゼミ)】

  • 考古学演習(考古学の方法論)…考古学の方法論を理解するうえで重要な原著論文等を講読する,2年生むけの演習です。
  • 考古学演習(実践研究論文読解)…方法論を駆使した実践的な研究論文や発掘調査報告書等を講読する,3年生むけの演習です。
  • 考古学演習(土器の実測)…実際に遺跡から出土した遺物をつかって,土器の観察方法とその観察結果のもっとも重要な表現媒体である実測図作成方法をまなぶ授業です。
  • 考古学演習(石器の実測)…実際に遺跡から出土した遺物をつかって,石器の観察方法とその観察結果のもっとも重要な表現媒体である実測図作成方法をまなぶ授業です。
  • 考古学演習(考古資料整理の実践)…自分たちが考古学実習で発掘した遺物を整理・分類したり,図面を作成したりして,調査結果をまとめる過程をまなぶ授業です。

【実習】

  • 考古学実習…夏休み中に,2週間かけて続縄文文化前半の遺跡である豊浦町礼文華遺跡を発掘します。2012・2013年の試掘調査では,2300〜2100年ほど前の恵山(えさん)文化期の貝塚・墓地が確認されています。豊浦町教育委員会のご協力のもと,調査期間中はかつて中学校として使われていた建物に宿泊し,自炊生活をおくります。

これらの授業は,毎年内容を変えていますので考古学概論以外の授業は2年次から4年次まで繰り返し履修することが可能です。

上記の授業とはべつに,4年生は指導教員とディスカッションをくりかえしながら,大学での学修の集大成となる卒業論文を作成します。

考古学で卒論を書こうとする学生にとっては,「考古学漬け」の学部生活を送ることができる充実したカリキュラムです。1995年に誕生した若い講座で,なおかつ考古学を専攻する学生は1学年あたり1〜4名ほどの少人数教育が徹底されていますが,すでに20 名をこえる卒業・修了生が,自治体の考古学・埋蔵文化財の担当者や大学・博物館等の研究者・学芸員として活躍しています。これまでの卒業生の研究テーマは,北海道・東北をはじめとする日本列島北部やその隣接地域の先史文化を対象としたものが多いですが,ヨーロッパ,アフリカ大陸,アメリカ大陸,南太平洋地域や,歴史時代を対象とした研究例もあります。

研究テーマを自分なりに掘り下げるには大学院で研究をつづけ,室内・野外調査の訓練をも積み重ねていく必要があります。しかし,北大の考古学教育のカリキュラムは,学部教育だけで自立した調査・研究に最低限必要とされる知識・方法を一通り習得できるよう設計された充実した内容になっています。全国の大学で開講されている考古学関係の授業は下記の日本考古学協会のサイトで見ることができますが,北大は複数の教員によって体系的に,偏りのない学部・大学院教育を展開していることがご理解頂けるかと思います。

http://archaeology.jp/academic/index.html

また,各年度の具体的な授業内容は下記URLでシラバスが公開されていますので,授業の詳細をお知りになりたい方はこちらをご参照ください。

http://syllabus01.academic.hokudai.ac.jp/Syllabi/Public/Syllabus/SylSearch.aspx

北海道豊浦町礼文華遺跡の発掘調査(考古学実習)

北海道豊浦町礼文華遺跡の発掘調査(考古学実習)